【意味】空手に先手なし(※1)
「空手に先手なし」とは絶対に自分から先に手を出してはならないという教えですが、空手道の奥義としては稽古の事ではなく、実戦において手足を全く出さずに喧嘩や争い事(戦争)を平和に治めて欲しいという強い願いが込められています。
その心を理解できるならば、稽古において試合や組手がいけないという事はありません。けれども、闘争本能を過剰に煽がないように、稽古においても平和、文化及び教育を目的に演武(型)のみとし、スポーツのような競技試合を行わないという一つの稽古の選択も、人道主義を重んじる武道の観点からも素晴らしい空手理念であり、決して伝統武道の理念からも相違するものではありません。かつて、船越義珍が所属していました伝統武道の総本山であった京都の大日本武徳会は今も100年以上の長い歴史の中で、自由組手や競技試合を実施せずに型演武のみとし、伝統武道の崇高な精神と技を頑なに守り続けています。船越義珍は沖縄空手だけでなく、剣術を中心とした日本武道の精神からも学んだ大切な教えなのです。
船越義珍の空手理念は手にも心にも剣(拳)のない境地。大きな心ですべての人を包み込む。そして、人を殺さず平和を求める心にこそ、本当に私達が空手道から学ぶべき大切な教えです。
【引用先】琉球新報1994年1月22日付
空手に先手なしの理念は一見敗北思想(臆病者の理念)に見られるが、人類と人間尊重の立場を築き上げた琉球の歴史から私は不動の信念と自信をもってそれが世界人類の平和と人間の命を尊重する慈悲の心・礎であり、空手に先手なしの哲理を守るのが・・空手のメッカたる沖縄が守らなければならない英知な思想であることを私は確信する。−長嶺将真ー
【推薦図書】
〇空手道教範(復刻版)(※2)
著者 船越義珍 発行所 榕樹書林(解説:宮城篤正)2012年
(昭和10年(1935年)7月19日 昭和天皇陛下へ献上された貴重な歴史書籍)
〇空手道一路 著者 船越義珍 榕樹書林
〇義珍の拳(著者 今野敏)発行所 集英社